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何処に行こうともこの暑さは変わらなかった。
うな垂れるようにして本を読んでいた私と、
同じく本をパタパタさせて体を冷まそうとするヴァン。

言わないようにしていたけれど言わずにはいられず。

「暑いわ」

「まじ、暑い」

それをオウム返しの様に言い続けている私達の元に
可憐な少女パンネロとアーシェの二人がやってきたのだ。

そして願ってもないお誘いにヴァンと●は即答で返事をした。




a nine days wonder




「ちょっと出かけてきますね。」

出掛ける先を一応は伝えておこうと
向かったった先にいたのはバッシュだけだった。

「それで何処に行くんだ?」

「知りたい?」

「それを言いに来たのだろう」

「もしお暇なら一緒に」

にこりと笑う彼女のその言葉に半ば強引に外へと連れ出された。
『今日暑いですよね?』と聞かれ、『暑い』と答えると、
●はそれなら良いんです。そう言って話を切り上げた。


クリスタルでテレポートし着いた先は、どういうことかフォーン海岸
雨期でもないこの時期は人影も殆ど無く、
穏やかな水面が太陽をキラキラと反射し輝かせている。



「一体・・こんな処――!!っ」

ここまで来た目的を教えて貰おうと隣にいた●に話しかける
横を向いて直ぐに首を真逆に逸らした

というよりそうせざる得ない状況だった
彼女は徐に服に手をかけ脱ぎ始めているのだから

「―何を」

考えているんだ。と続く筈だった言葉は、
駆け出した三人の姿によって遮られてしまっていた。

「涼みに来たんですよ?」

呆気にとられているところを話しかけられ
素直に●の方を向いてまたもや顔を背けてしまった

いつも露出の少ない服を着ている彼女が
たとえ着ているにしろいきなりこんな格好になられては
目のやり場にも困ってしまう。

あの三人を見るようにできればいいものを―

「早く行きましょ」

「-・・何?」

「暑いって言ったじゃない」






よもやこんな事になろうとは…。


先に行ってしまった四人の後を追うように
足を進めるが海に入る事に躊躇うバッシュところに来たのは

「冷たくて気持ちいいわ、それにね向こうに魚がいたの」

だから。と手招きされなるべく前を見ないようにしながら彼女の元へ。
言っていた通り小さな魚が揺らめく水中を泳いでいるのが見える。
●はそれを水面近くで眺めていた。

その時―

岩場から声を上げて飛び込んだヴァンの水飛沫が
彼女を飲み込んでしまった。

ポタポタと髪から水滴を落としながら
●はゆっくりと体を起こす

「ヴァ~ン~!!」

「?」

「魚逃げちゃったじゃない!」

「あ、ゴメンっ」

片手をあげ謝ってはいるがヴァンはまた勢いよく岩場から飛び降りている。
それを見て溜息をついた●は諦めた様にゆっくりと沖へと泳いでいった。


「もぅ、ヴァンったら」

気を取り直して魚を眺めようと泳いでいく。



バッシュがいる場所からさほど離れていないのに、
徐々に目の前の海の色が水色から藍色に変わっているのに気がついた。

多分ここから先は急に深くなっているのだろう。
足先に流れる水の冷たさに少し怖くなり岸へ戻ろうと体を返した-

「――!」

不安定な砂の足場ではその場に留まれず、引いていく波に連れていかれる
●の体は海の中に音を立てて姿を消してしまった

●・・!?」

それを見ていたバッシュはすぐさま彼女がいた場所まで泳いでいく。
助けるため潜ろうとした目の前に彼女が水面に顔を上げ大きく息を吸う。

「―ッハァ」

●、大丈夫か」

「・・バッシュ、肩貸してくれる?」

言われるがまま彼女を受け入れると腕は肩を通り越し
掴まるように首へとまわっていた

予想以上に触れ合った肌に体が強張り
離れようとしたバッシュに●はポツリと言葉を洩らす

「足・・・・攣っちゃった」

二人が抱き合う姿に気がついたヴァンが騒ぎ始めるが
それに反論する余裕も無くジッと足を抑える



「治りそうか?」

「大丈夫そうなんだけど、離すのがちょっと不安」

「こうしているより一度岸に上がった方がよさそうだな」

●の背を片手で押さえながら静かに泳いでゆく

「でも」

「何だ?」

歩けるかどうか分からない、と打ち明ける前に体は簡単に持ち上げられ
肌の上を水が流れ落ちていった。

バッシュから手を離し砂浜に下りて手を離してみるが
何かあれば直ぐにまた再発しそうな状況だった。




「じゃ、俺達先に帰るから」

「えっ?」

ヴァンにパンネロそれにアーシェ。
何故か三人とも既に帰り支度を済ませ
手を振ってクリスタルへと向っているのだ。

「ゆっくりしていって」

と妙な言葉を残し遠のく三人の姿。
そして引き金をひいたのはヴァンのこの一言

「バルフレアに報告しないとな」

「?!ちょっとヴァ―~っぅ」

うずくまり足先を押さえながら悶絶。

「バッシュ、ごめんなさい。ついでに変な噂まで立ててしまって」

「事実ではないんだ、そんなに気にする事もないさ」

バッシュの顔を見つめたまま●は少し困った顔を見せた。

「噂だから困りますよ。本当なら隠さずに済むのに」


「、、、ああ。。。そうだな」

そう答えた後この返事で良かったのか疑問に思えてきた。

噂はダメで、事実ならいい。
当たり前の事を言われているのに酷く落ち着かないのは何故だろうか?―